予測メソッドの実装¶
学習したモデルパラメータを使って,未知の事例のクラスを予測する predict()
メソッドを,できるだけ NumPy 配列の利点を活用生かす方針で実装します.
このメソッドは,未知の特徴ベクトルをいくつか集めた配列 X
を引数とします.
そして, X
中の各特徴ベクトルに対する予測ベクトルをまとめた配列 y
を返します.
最初に, fit()
メソッドと同様に, n_samples
や n_features
などの定数を設定します.
未知ベクトルの抽出¶
次に, X
から未知ベクトルを一つずつ抽出します.
NumPy 配列の属性と要素の参照 では,配列の要素を一つずつ参照する方法を紹介しました.
これに加え,NumPy 配列は,リストや文字列などのスライスと同様の方法により,配列の一部分をまとめて参照することもできます.
1次元配列の場合は,リストのスライス表記と同様の 開始:終了:増分
の形式を用います.
In [10]: x = np.array([0, 1, 2, 3, 4])
In [11]: x[1:3]
Out[11]: array([1, 2])
In [12]: x[0:5:2]
Out[12]: array([0, 2, 4])
In [13]: x[::-1]
Out[13]: array([4, 3, 2, 1, 0])
In [14]: x[-3:-1]
Out[14]: array([2, 3])
NumPy 配列やリストを使って複数の要素を指定し,それらをまとめた配列を作ることもできます.
これは,配列 x
からリストと NumPy 配列を使って選んだ要素を並べた配列を作る例です.
In [20]: x = np.array([10, 20, 30, 40, 50])
In [21]: x[[0, 2, 1, 2]]
Out[21]: array([10, 30, 20, 30])
In [22]: x[np.array([3, 3, 1, 1, 0, 0])]
Out[22]: array([40, 40, 20, 20, 10, 10])
2次元以上の配列でも同様の操作が可能です.
特に, :
のみを使って,行や列全体を取り出す操作はよく使われます.
In [30]: x = np.array([[11, 12, 13], [21, 22, 23]])
In [31]: x
Out[31]:
array([[11, 12, 13],
[21, 22, 23]])
In [32]: x[0, :]
Out[32]: array([11, 12, 13])
In [33]: x[:, 1]
Out[33]: array([12, 22])
In [34]: x[:, 1:3]
Out[34]:
array([[12, 13],
[22, 23]])
それでは,配列 X
から一つずつ行を取り出してみます.
そのために for
ループで i
行目を順に取り出します.
for i in range(n_samples):
xi = X[i, :]
np.ndarray
は,最初の次元を順に走査するイテレータの機能も備えています.
具体的には,1次元配列なら要素を順に返し,2次元配列なら行列の行を順に返し,3次元配列なら2次元目と3次元目で構成される配列を順に返します.
次の例では,行のインデックスを変数 i
に,行の内容を変数 xi
に同時に得ることができます.
for i, xi in enumerate(X):
pass
なお,リスト内包表記や np.apply_along_axis()
を利用する方法もありますが,どの実装の実行速度が速いかは事例数や特徴数に依存するようです.
対数同時確率の計算¶
方針(1)¶
次に,この未知データ xi
のクラスラベルを, 単純ベイズ:カテゴリ特徴の場合 の式(6)を用いて予測します.
すなわち, xi
に対し, \(y\) が 0 と 1 それぞれの場合の対数同時確率を計算し,その値が大きな方を予測クラスラベルとします.
まず \(y\) が 0 と 1 の場合を個別に計算するのではなく, NumPy の利点の一つであるユニバーサル関数を用いてまとめて計算する方針で実装します.
ユニバーサル関数は,入力した配列の各要素に関数を適用し,その結果を入力と同じ形の配列にします.
式(6)の最初の項 \(\log\Pr[y]\) は,クラスの事前分布のパラメータ self.pY_
に対数関数を適用して計算します.
このとき,対数関数として math
パッケージの対数関数 math.log()
ではなく,ユニバーサル関数の機能をもつ NumPy の対数関数 np.log()
1 を用います.
logpXY = np.log(self.pY_)
式(6)の第2項の総和の中 \(\log\Pr[x_j^\mathrm{new} | y]\) の計算に移ります.
計算に必要な確率関数は,モデルパラメータ self.pXgY
の j
番目の要素で,もう一方の未知特徴ベクトルの値は, xi
の j
番目の要素で得られます.
最後の \(y\) については, :
を使うことで 0 と 1 両方の値を同時に得ます.
これを全ての特徴 j
について求め,それらを logpXY
に加えます.
for j in range(n_features):
logpXY = logpXY + np.log(self.pXgY_[j, xi[j], :])
np.log()
と同様に, +
や *
などの四則演算もユニバーサル関数としての機能を持っています.
同じ大きさの配列 a
と b
があるとき, a + b
は要素ごとの和をとり,入力と同じ大きさの配列を返します.
*
については,内積や行列積ではなく,要素ごとの積が計算されることに注意して下さい.
In [40]: a = np.array([1, 2])
In [41]: b = np.array([3, 4])
In [42]: a + b
Out[42]: array([4, 6])
In [43]: a * b
Out[43]: array([3, 8])
方針(2)¶
以上のような for
ループを用いた実装をさらに改良し,NumPy の機能をさらに生かした実装を紹介します.
具体的には,(1) NumPy 配列 self.pXgY_
の要素を,一つずつではなくまとめて取り出して (2) それらの総和を計算します.
まず(1)には,NumPy 配列やリストを使って複数の要素を指定し,それらをまとめた配列を作る機能を利用します.
for
文によって j
を変化させたとき self.pXgY_[j, xi[j], :]
の1番目の添え字は 0
から n_features - 1
の範囲で変化します.
2番目の引数は, xi
の要素を最初から最後まで並べたもの,すなわち xi
そのものになります.
以上のことから, self.pXgY_
の要素をまとめて取り出すとき,2番目の添え字には xi
を与え,3番目の引数は :
でこの軸の全要素を指定できるので,あとは1番目の添え字が指定できれば目的を達成できます.
1番目の添え字は 0 から n_features - 1
の整数を順にならべたものです.
このような,等差級数の数列を表す配列は np.arange()
関数で生成できます.
-
np.
arange
([start, ]stop, [step, ]dtype=None)¶ Return evenly spaced values within a given interval.
使い方はビルトインの range()
関数と同様で,開始,終了,増分を指定します.
ただし,リストではなく1次元の配列を返すことや,配列の dtype
属性を指定できる点が異なります.
NumPy 配列の添え字として与える場合には dtype
属性は整数でなくてはなりません.
ここでは, np.arange(n_features)
と記述すると,引数が整数ですので,規定値で整数型の配列がちょうど得られます.
以上のことから self.pXgY_[np.arange(n_features), xi, :]
によって,各行が, j
を 0 から n_features - 1
まで変化させたときの, self.pXgY_[j, xi[j], :]
の結果になっている配列が得られます.
なおこの配列の shape
属性は (n_features, n_classes)
となっています.
この配列の各要素ごとに対数をとり, j
が変化する方向,すなわち列方向の和をとれば目的のベクトルが得られます.
まず, np.log()
を適用すれば,ユニバーサル関数の機能によって,配列の全要素について対数をとることができます.
列方向の和をとるには np.sum()
関数を利用します.
-
np.
sum
(a, axis=None, dtype=None)¶ Sum of array elements over a given axis.
引数 a
で指定された配列の,全要素の総和を計算します.
ただし, axis
を指定すると,配列の指定された次元方向の和を計算します.
dtype
は,返り値配列の dtype
属性です.
axis
引数について補足します.
axis
は, 0 から ndim
で得られる次元数より 1 少ない値で指定します.
行列に相当する2次元配列では, axis=0
は列和に, axis=1
は行和になります.
計算結果の配列は,指定した次元は和をとることで消えて次元数が一つ減ります.
指定した次元以外の shape
属性はそのまま保存されます.
対数同時確率は,これまでの手順をまとめた次のコードで計算できます.
logpXY = (np.log(self.pY_) +
np.sum(np.log(self.pXgY_[np.arange(n_features), xi, :]),
axis=0))
注釈
- 1
np.log()
やnp.sin()
などの NumPy の初等関数は,math
のものと比べて,ユニバーサル関数であることの他に,np.seterr()
でエラー処理の方法を変更できたり,複素数を扱えるといった違いもあります.
予測クラスの決定¶
以上で, \(y\) が 0 と 1 に対応する値を含む配列 logpXY
が計算できました.
このように計算した logpXY
のうち最も大きな値をとる要素が予測クラスになります.
これには,配列中で最大値をとる要素の添え字を返す関数 np.argmax()
を用います 2 .
-
np.
argmax
(a, axis=None)¶ Indices of the maximum values along an axis.
逆に最小値をとる要素の添え字を返すのは np.argmin()
です.
-
np.
argmin
(a, axis=None)¶ Return the indices of the minimum values along an axis.
予測クラスを得るコードは次のとおりです.
y[i] = np.argmax(logpXY)
この例では,予め確保しておいた領域 y
に予測クラスを順に格納しています.
以上で, NaiveBayes1
クラスの実装は完了しました.
実行可能な状態のファイルは,以下より取得できます.
注釈
- 2
NumPy 配列のメソッド
np.ndarray.argmax()
を使う方法もあります.