Mr.Bengoは,新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT)で開発された法的推論システム new HELIC-IIを使いやすく・親しみやすくするために,音声や画像技術を用 いたインターフェースを備えつけたものです.
new HELIC-IIは,裁判の対象となっている事件に関連する法令・判例のデータを用意しておくと,それらを使って仮想的に論争するシステムです.
実際の裁判では原告側と被告側に分かれ,異なる価値観に基づいて互いに主張し合います. 例えば,原告側は“個人を重視”,被告側は“社会性を重視”という,それぞれの価値観に基づいて論争します.
new HELIC-IIでは、この価値観の違いが再現されている高度な仮想的論争をすることができます.
しかし,new HELIC-IIを使うにあたっては,その操作に精通している必要があり,また,コンピュータの専門家向けの特別な書き方で論争の内容が示されるといっ た問題があります.
Mr.Bengoではこれらの問題の解決ため,マイクに向かって話すだけで簡単に取り扱えるよう,音声認識技術を利用しました. また,論争の内容を,親しみやすく・易しく利用者に示すために画像認識・表示技術を利用しました.
Mr.Bengoには,目の働きをするカメラが装備されています. このカメラにより,Mr.Bengoを現在だれが利用しているのかを判別することがで き,その人にに適当な応対をします.
具体的には,太郎さんがMr.Bengoの前に現れると,Mr.Bengoは「太郎さんようこそいらっしゃいました. 太郎さんは『宝くじバイク購入問題』の件をご相談下さっていましたね」 といった応対をします.
Mr.Bengoはまず最初に相談案件について事実を述べます. 続いて,この案件に関連する事項について質問が行われます.
具体的には,はじめに『宝くじバイク購入問題』について,すでに確認されている事柄が話されます. つぎに,「あなたはすでに一回でもローンを支払いましたか」といった質問がなされるので,マイクに向かって「はい」とか「いいえ」といったふうに答えます.
ひととおり事実確認が終ると論争が始まります. 最初は,予測される原告側の主張をMr.Bengoが話します. それを受けて被告側は反論しなければなりませんが,原告側の主張の中で反論が考えられる部分を,Mr.Bengoは示してきます. そして,利用者が反論を試みたい部分を指定すると,適当な反論が示され,それを原告側に主張します.
MrBegnoでは,原告側と被告側は互いに異なる価値観に基づいて主張します. new HELIC-IIの機能により,このような異なる価値観に基づいた論争を行うことができ,互いの主張の違いがどのような価値観の相違に基づいて生じるのかを 確認できます.
さらに,裁判の状況が不利になったりするとMr.Bengoの画面に現れている原告側や被告側の人間の表情が変化するので,裁判の状況が直観的に分かるとともに, ぎこちなくなりがちなコンピュータとの対話が自然になります.
Mr.Bengoでは,途中で法令などを参照することができます. 法令などのデータベースはWWW上に用意され,WWWページに表示されている法令を マイクを利用して選択すると,その法令の内容が示され,さらに,関連する法令 や判例の一覧が示されます.
争点がなくなったり,利用者が指示した場合に論争は終了します. 論争が終了すると,予測される結論が示され,Mr.Bengoは新たな利用者を待ちます.